こんにちは。臨床心理士として20年、
「幸せな結婚・夫婦・家族カウンセリング」の
谷地森久美子です。
さて今回は
「依存」と「愛」の混乱から抜け出す鍵について。
カップルのあいだで口論や葛藤が絶えない時、
依存のテーマが関係している場合があります。
それを改善する鍵は「境界線」。
「境界線」ときくと、
ふたりのあいだを隔てるような連想が湧くかもしれませんが、
みなさんの人生に幸せをもたらす
大事な要素のひとつなのです。
それでは、はじめていきましょう。
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夢みるひとが、こころ密かに持ち続けている
結婚イメージの中に、
相手が幸せを運んでくれる、
相手が自分を幸せにしてくれる、という期待が
交じっていることがあります。
この密かな夢/期待が、現実の結婚生活において、
ふたりの関係を阻む要因となることがあるのです。
つまり、
自分の人生を、相手が幸せにしてくれる――?!
何か、おかしくありませんか。
この勘違いを交通整理する鍵が、
「関係における境界線」です。
これは、カップル・夫婦だけでなく、
親子関係、職場の人間関係においても
関係を良好にするための大事な要素のひとつです!
関係における境界線には、大まかに3つの種類があります。
それらが、自分自身の中ではどうなっているか、みなさんも
チェックしながら振り返ってみてくださいね。
もし、パートナーとの関係がしっくりいかず、
辛い状況にある方は、
境界線の種類や働きを知ることが
関係修復のヒントになるはずです!
それでは、詳しくみていきましょう!
1)「身体や所有」の境界線:
自分の身体が安心感・安全感を感じられる境界のことです。
同様に、情報も含めた自分の所有物が安全に守られるための
境界線です。
この境界が脅かされると、次のような混乱が起きます。
*持ち物が、本人の許可なく勝手に使われたり、
捨てられたりする/される
*夫婦や親子だからと勝手に、携帯・手帳・財布などを
盗み見する
*親が思春期を過ぎた子どもの部屋に勝手に入る
(成長した子どもと、一緒の布団・風呂に入るも同様)
*夫婦・家族のあいだで暴力がある
(これは大人の場合は、DV。
子どもの場合は虐待に相当する状況)
*繰り返し、自ら過酷な状況に身を置き続ける
*自分に不利益をもたらすひとと縁が切れない、
なぜか関わり続ける
2)「心理面」の境界線:
自分の気持ち・感情などを大切にしながら、
決定や行動をしていくための境界であると共に、
自己肯定や自己受容にも大きく影響する
境界線です。
この境界が脅かされると、次のような混乱が起きます。
*他人に影響を受けやすく、過度に気を遣う
*相手がだらしなくしていると、
パートナーである自分が恥ずかしくなる
*相手が楽しそうでないと、自分が悪いように感じる
*相手の表情・反応に過敏になり、
自分の気持ちを言葉で伝えられない
(過度に恐怖がつきまとう場合、
モラハラ・パワハラに陥っている状況)
*率直に、ノーと断ったり、交渉することができない
*周囲から受けた自分への批判・批評と、
自分の価値を、分けて考えることができない
3)「責任」の境界線:
自他の責任を明確にわけ、
自分の人生を生きるための境界線です。
仕事においては、自分の責務を全うしつつ、
リスクを、協働で分担するための大事な一線です。
この境界が脅かされると、次のような混乱が起きます。
*相手が幸せにしてくれることを密かに望んでいる
*相手が自分の思い通りにならないと、
相手が悪いと非難してしまう
*相手の問題を、相手以上に必死になって解決しようとする
*自分が判断すべき人生の大事な決断を、
相手にゆだねてしまう
*自分の業務の範疇か、相手の業務なのかを
判断することができない
上記の境界の混乱は、程度の差はあれ、
私たちの生活に日常的に起きていることです。
特に日本の家族は、夫婦も、親子も、
境界があいまいになりがちです。
いい子を演じてきたひとは、
大人になってからは心優しい夫・従順な妻へ、
さらには、健康を害するまで組織や業務に
身を投じてしまうことも、
ビジネスシーンでは日常的にみられる現象です。
さて「境界線」問題は、依存や共依存とも
隣り合わせのテーマです。
つまり親子や夫婦の愛情だと思われていたことが実は、
こころの空虚さ、人生への主体性のなさが起因した
「依存」の現れであること。
ここで「境界線の重要性」をまとめておきますね。
「これが自分」という確かさが在る場合、
あなた自身に、境界線がある証拠。
自分の「輪郭」がはっきりと出来上がっていれば、
その段階で、境界を創る・引く力が備わっており、
自然と自他の区別をつけることができる――。
(自分が在るという確かさは、以前、話題にした
「良質なこころの器を持っている状態」です)
そうすると、パートナーとの
コミュニケーションにおいても、混乱が生じません。
境界があることで、自分も相手も、
互いに区切られ、関係が守られるからです。
(ふたりのあいだに、良質な境界線があれば、
相手を手足にせず、互いに尊重しあえるのです)
「関係における境界(線)」には、
次の2つの働きがあります。
それは――「守り」と「熟成」。
「守り」の働きとは、文字通り、
自分を外から守る、ということ。
相手が自分の大事なテリトリーに入ってきそうな時も、
境界線によって、しっかり自分を守る。
安全感・安心感を土台に、自身の健康、時間、空間、
自分のプライバシーなどを守る、大切にする。
考え、行動は、自分自身が決めることができる。
つまり自分の尊厳を大事にできる。
(自分の尊厳を大事にできるひとは、
相手の尊厳も大事にできる)
と同時に、自身と相手の責任も、
明確化・区別できる、など。
「熟成/変容」の働きとは、
自分の中にある激しい衝動、感情の暴走を防ぎ、
それらをこころの中で留め置くことができること。
その過程によって内面の熟成が可能になるということ。
境界線がなければ、自他の区別があいまいのまま、
エゴを相手に押し付け、
自分の衝動に自分自身が振り回され、
その結果、いつの間にか相手を巻き込んで
カオス状態にハマっていきます。
一瞬、甘美な一心同体の感覚も伴いますが、
カオス状態による混乱は、
自分も相手も尊厳が脅かされ、
いずれ限界や危機に至ります。
つまり、境界線は、
あなたと相手を引き裂くものではなく、
あなたを拘束するものでもありません。
「境界線を育むこと」「境界を意図すること」は、
依存のテーマから抜けだすためにも、
かけがえのない人生を自ら創造していくためにも、
そして大事なひとと愛を育み、
幸せをつかみ続けるためにも、大事な要素なのです!
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