人生で希望を失いかけたときの、こころの処方箋 ~人生中盤からの「内なる異性」との向き合い方1~

こんにちは。臨床心理士として20年、

「幸せな結婚・夫婦・家族カウンセリング」の谷地森久美子です。

人生の節目で、これまで積み上げてきたキャリアを投げ出して、

新しい世界に果敢にチャレンジする人がいますよね。

「本当にやりたいこと」は、

自分ができてきて初めて見つけられるものかもしれせん。

今回は、生きていく中でふと希望を失いかけた大人が

自分自身の可能性を開花していくためのヒントにもなる、

「ペルソナ」と「内なる異性」について考えていきます。

それでは、はじめていきましょう。         

**********************************

       
私たちは、人生の節目節目で、ふと、
  
「これでいいのか…」と、
   
自分自身に問わざるを得ないような、
局面が、あるものですね。
   
例えば、周囲から求められる役割が
重荷になったり窮屈になったり、
前は馴染んでいたのに、違和感を感じたり。
   
これまでの自分自身とは異なる、「方向転換」が
迫られる人生の過渡期。
   
  
分析心理学の大家であるユングは、自身の
中年の危機の体験もふまえて、
   
人生中盤以降の「生き方」について、
興味深い示唆を与えてくれています。
   
    
ここから、ユング心理学の考え方をもとに、
私たちが豊かな人生を過ごすための
    
自分の「こころ」との向き合い方、
そして「人生丸ごと生きる」について
考えていきましょう!
        
   
まず、ユングは、
「心」には3つの次元があると考えました。
     
いまここを感じたり考えたりできる「意識」、
その先にある「個人的無意識」、
そのさらに奥にある個人を越えた「集合的無意識」。
       
そして、
日常生活で光のあたっている「意識」の領域・次元に加え、
無意識の「働きや秘密の目的」をも含めて、
「全体を生きていく(全体性を目指す)」こと――。
   
これが、自己実現(個性化)への道である――としました。
    
  
「意識・無意識」「全体性」「個性化」など、
日常生活には、馴染みがない言葉ですね。
    
優しい言葉で要約すると、
        
なかなか気がつくことができない、
無意識の領域も含めて自分なのだととらえて、
   
自分の可能性まるごと生きていくことが、
私たちの成熟の道である――、ということです。
    
    
その上で、ユングは
成長・成熟、自己実現・個性化に欠かせない
「基本的な態度・在り方」を定義しました。
          
それが、次の2つです。
     
*外・世界に応じていくための態度
(外なる自分/ペルソナ)
    
   
*内側の自分に応えていく態度・在り方
 (内なる自分/内なる異性:アニマとアニムス)
     
ここから、さらに詳しく考えていきましょう!
   
     
1、「外なる自分」(ペルソナ)作りが
社会に入り、自立していくための第一歩:
        
私たちは、この世に生まれると同時に、
「名前」を付けられ、「〇〇という親の子ども」、
「〇〇家の子ども」となります。
   
その家の習慣や文化、環境、親の価値観・期待は、
子どもに大きく影響を及ぼしていきます。
   
子ども時代は、ひとりでは生きていられない…。
   
そして親や身近な大人に認められたい、
気にいられたいと思うもの。
親に見捨てられるのは、死活問題です。
   
そのため、周囲の期待や価値観に沿った
態度やあり方を選んでいく。
     
この過程で身に着けていく、
「外」・「世界」にむけた根本の態度を
ユングは「ペルソナ」(persona)と呼びました。
   
    
例えば、学校に入る前の子どもであれば、
「好き嫌いなく食べるように」、
「丈夫なからだになるように」、
「親の言うことをきくように」――、
    
学校に入ってからは、
「勉強ができるように」、
「たくさん友だちができるように」――、
     
そして10代後半から20代になると、
「〇〇大学に合格できるように」、
「○○社から内定がもらえるように」などなど、
   
成長に応じて、親や社会から、
様々なニーズが求められます。
   
この過程でペルソナを身に着けていき、
結果として、ある役割を担ったり、
特定の地位や肩書を手にしていったりします。
       
例えば、受験に熱を入れる親のもとで育てば、
    
子どもとしては、
テストで高い点数をとること、
秀でた成績・順位などが期待される。
  
そして、それを目指して
頑張らなければならない空気に
合わせていく生き方となります。
    
結果として「よい子」「優等生」という役を担い、
   
高い偏差値の大学に入り、
誰でもが知っている会社から内定をもらったり、
あるいは、超難関の資格を取得する。
  
これらも広義のペルソナ。
   
(念のため言いますが、これらは特定の家庭や社会における、
期待や価値のひとつにすぎません。)
   
         
ペルソナは、「(役者の)仮面」という意味もあり、
「外に対する自分(外なる自分)」です。
    
仮面というと、微妙に“本当のその人ではない”という
ニュアンスが醸し出される印象もありますが、
   
それを介して、私たちは外の世界と関わり、
社会の一員として迎えられるパスポート的側面も
あるのです。
  
ペルソナには、このような肯定的な意味もあることを
最初に、おさえておいてくださいね。
     
人生前半は、この「外なる自分創り」に、
エネルギーを投入していくことが課題となっていきます。
  
    
2、「内なる自分(内なる異性)」を生きることが
人生の成熟・自己実現へ至る道!:
   
ペルソナは、社会に向けた/合わせた
意識的な態度・在り方です。
    
別な表現をすれば、
「ペルソナ(外側の人格、役割)を演じている」とも言えます。
   
先の1に、人生前半は、ペルソナ創りが必須である、
と述べました。
   
それを土台にした上で、若い時の勢いのまま、
   
人生中盤以降も、ペルソナ中心の生き方を続けていった場合、
どうなるでしょうか。
   
多くのかたが中年期前後、冒頭にもあげた状況になります。
  
こころの次元において、ペルソナに従う生き方は
可能性の半分…。 
     
社会に合わせた、外界に応えた生き方に偏りすぎると、
表に現れている「形」や「結果」だけに目が奪われたり、
外側に、中味がついていかなかったりします。
     
どこか一面的で、「そのひと全体」(存在まるごと)から
眺めると、不具合が生じてくることがあるのです。
   
(ただし、良質なペルソナ創りができて初めて、
この不具合に関与できる準備が整います。
そういう意味で、ペルソナ創りはとても重要なのです)
   
若さに陰りが見え始めた中年期に差し掛かった頃、
  
あるいは、親・家・社会など、
周囲に合わせた生き方が行き過ぎた時、
     
私たちは、限界にぶつかります。
    
(「限界」は、時として、精神的な行き詰まり、
人間関係、仕事のスランプ、よきせぬ出来事、
大病を患うなど、さまざまな形で現れます)
     
      
ユングは、「外に応えていく在り方」(ペルソナ)に対しての、
   
「内側の自分に応えていく態度・在り方」を
    
『内なる異性(アニマ・アニムス)』としました。
  
そして、
    
男性のこころの中に見られる、
女性的な特質を「アニマ」、
    
女性のこころの中に見られる、
男性的な特質を「アニムス」、としました。
   
アニマとアニムスに関して、次回、詳しく扱っていきますが、
大まかには、次のようなイメージです。
   
男性のこころの中にある「アニマ」は、
    
自分の気分、感情、情緒、直観(直感)、ひらめきなどの特質。
凝り固まった意識をひろげてくれるもの。
愛すること、人間的な関係を創り出す能力を呼び覚ましてくれる
ものでもあります。
    
女性のこころの中にある「アニムス」は、
    
その道を先導してくれる案内者(ガイド)。
混沌に光を投げかけ、適切な言葉を与える特質。
選別能力、女性の意識の集中化を可能にするもの、などです。
    
内なる異性は、
ペルソナだけで生きようとする一面的な態度や在り方を
補完するものです。
   
ペルソナと、そして(無意識にある)内なる異性、
この両方が機能して初めて、私たちは納得感のある、
自己実現への道に至るのです!
   
    
そのために実際、私たちは、内なる異性の中にある
特質をどうやって、自分のものとして生かすことが
できるのでしょうか。
   
    
例えば、こんなふうに考えてみましょう。
  
    
太陽の光が当たっているところが、意識。
影になっているところが無意識。
   
こころの中にも、光があたる場所(日向)と、日陰があります。
  
ペルソナは日向にあり、内なる異性は日陰にある。
  
両方を同時にとらえるのは難しいですね。
  
ここでユングは、
自分の無意識は、
外(自分以外の相手やもの・状況)に投影されること――、
    
目の前の、現実の「相手」との関わりを通し、
相手の魅力や特質だと思っているもの自体、
自分の中にあると自覚すること――、
   
そして、そのエッセンスを自分の人生に生かしていくこと――。
  
   
あなたの内なる異性に、
「現実の異性を通して出会う」ことが可能なのです。
   
    
そしてなによりも、ユングは、
    
独身の方なら、あこがれる異性ですし、
結婚している方なら、
パートナーやなぜか心ひかれる人など、
   
異性との、出会いや関わりの、
「真の意味」を示唆したのです!
      
     
初対面のはずなのに、「初めてあった気がしない」や、
   
出会った頃、優しかったのに、結婚して、
「どうして、こうなっちゃうの?!」や、
    
いけないことだとわかっているけれど、
寝ても覚めても、あのひとの顔がうかぶ状態まで、
    
「内なる異性」のしわざかもしれません。
   
  
内なる異性については、次回、さらに詳しく考えていきます。

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