こんにちは。臨床心理士として20年、
「幸せな結婚・夫婦・家族カウンセリング」の
谷地森久美子です。
「なんでまた、こんなことをするの!?」と、
距離が近い相手ほど、激しく怒ってしまうことは
誰でもあります。
さて今回は、身近な相手と無駄に
イライラしないための工夫として、
「怒りのデッドライン」について考えていきます。
これはパートナーに限らず、
子ども、仕事などにも幅広く応用できる考え方です。
それでは、はじめていきましょう。
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パートナーに「イライラする」「怒りを感じる」こと、
みなさんは、ありませんか。
そして、ぱっと思いだすのは、どんなことしょうか?
それは、男女・異性関係、浮気に関わることでしょうか。
それとも、時間感覚や金銭感覚など、
生活に関わることでしょうか。
一口に「怒り」といっても、
相手や状況によって、様々ですね。
「カチン!」「イライラ!!」「許せない!!!」
怒りの感情を想像すると、
瞬間的に湧きあがるイメージがありますが、
実は、そうではありません。
臨床心理学には、
様々な治療的アプローチがありますが、
怒りと上手につきあうための
心理トレーニングのひとつとして、
「アンガーマネジメント」と呼ばれる手法があります。
そのアンガーマネジメントにおいては、
怒りは突然生じるものではなく、
怒りになっていく段階があると考えます。
それは――、
ある出来事に遭遇する
↓
その出来事に意味付けを行う
↓
そして、怒りの感情が生まれる
一見、同じ出来事に見えても、
人生経験や、相手との関係の歴史などによって、
私たちは、異なる意味づけを行い、
怒りの感情がわいたり、そうでなかったりするのです。
怒りが厄介なのは、いったんイライラしだすと、
こころがかき乱されて、いつものペースを
保てなくなること。
先にあげたように、
ある出来事を否定的に意味づけしてしまうと、
自分の中から湧きでた、
その怒り自体に、自分が振りまわされる。
その状況から、“自分を取り戻す”ために、
次の工夫をご紹介いたします。
〔1〕怒り・イライラの分析をする:
まずは、何度も繰り返される怒りを
思い浮かべてみましょう。
そして仮に、
つい先ほどまで怒りがなかったはずなのに、
怒りにまつわる状況を思い出した途端、
その記憶が引き金となって、
イライラや激しい怒りが始まってしまったら――。
その際、以下の内容を丁寧に、
自分自身に語りかけ、
気持ちをしずめてあげること。
イラついたのは過去であって、現在ではない――、
昔の私は、怒ったかもしれない。
でも、今の私は大丈夫――と。
ひとによっては、その怒りが身体に影響したり、
過去の出来事がリアルに再現され、
いま現在が、それにおびやかされたり
することがあります。
そのためにも、
時間としての過去と現在、
昔の自分と今の自分とを、
しっかり線引きしてわけること、
時空間や状況を区分する「境界線」を
意図することが肝心です。
このことは、辛い過去の記憶から、
現在の自分を守る=今この瞬間(現在)を
大切にする工夫でもあります。
これは、「自分はいったいどうしたいのか、
何を目指しているのか、はっきりしない、
ぼんやりしている」と感じる方にとっても、
「良質な自分創り」のひとつとなりますので、
おすすめです。
〔2〕怒りのデッドラインを明らかにする:
イラつく状況・事柄について、
「ここまでは許せるけど、ここからは耐えられない」
という、怒りの限界(デッドライン)を明らかにすること。
たとえば、パートナーがいつも時間にルーズだとします。
「連絡なしに10分、20分遅れるのは、いやだ。
せめて約束時間前に連絡をくれれば、まだ許せる。
30分までの遅れは、許容範囲。だから必ず連絡して」と
伝える。
たとえば、パートナーが、仕事熱心で、
家にいる時でも、携帯・PCから
目を離さないとします。
その場合、
「緊急・至急の案件以外で、
21時以降の仕事メールは、ひかえてほしい」と
お願いする。
たとえば、仕事の付き合いのため、
深夜帰宅が多いパートナーの場合、
週7日のうち4日間は必ず、家族のこと、
日ごろ、気になったことなど、話し合う機会を
忘れず設ける、などなど。
快・不快は自覚しやすいのですが、
不快であることと、怒りの有無の区別、
どこまでが許容範囲で、どこからが許せないのかの
自覚と線引きなどは、思いのほか、
漠然としていることが多いのです。
時折、怒りのオーラを発しながらも、
怒りに無自覚な方がいます。
“あなたの空気がこわい”ことを遠回しに伝えてみても、
「何、おかしなことを言っているのだ」と、逆ギレされ、
さらに、こわい目にあう…という体験は、夫婦間では
よくきく話ではありますね(笑)。
誰かの言動が引き金で、怒りがわく時には大抵、
「そうじゃない」とか「本当はこうしてほしいのに」
という思いが根底にあるはずです。
そのため
「これは嫌」だけど「こうしてくれると嬉しい」、
「これなら受け入れられる」を
自分自身も、できる限り自覚し、
相手に具体的に提示できると、お互いの精神衛生にも
とても良いことです。
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