男はつらい…!男性が弱さと向き合い豊かな人生を手に入れる秘訣 ~人生中盤からの「内なる異性」との向き合い方2~

こんにちは。臨床心理士として20年、
「幸せな結婚・夫婦・家族カウンセリング」の谷地森久美子です。

『男は、つらいよ』――昭和の時代、
国民的人気を誇る映画がありました。

なんとも絶妙なタイトルですが、
平成の時代になっても「男はつらい」「男は生きづらい」。

今回は「男性らしさ」を入り口に
パートナーとの葛藤を通して、
弱さと向き合う意義について考えていきます。

男性の内なる異性=アニマ(女性的特質)を取りあげますが、
女性性を充分に生きていないと感じる、
女性にも通じる話です。

それでは、はじめていきましょう。

**********************************
        
弱さをみせてはいけない。
ひとりで生きていける力がなければならない。
稼げないと、一人前ではない、などなど、
    
社会からの“こうあるべき男らしさ・男性像”に、
こたえようとする人ほど、
生き辛さを抱えることになりますね。
   
この社会生活を円滑に行うためにつくられた
こころの中の基本的な態度を
   
心理学では「ペルソナ」と呼びます。
   
しかし、そのあるべき像とは、相容れない別の要素は、
どんどん意識の外、心の奥に追いやられたままとなります。

 
一口に心といっても、つかみどころがないですが
   
それは、「島」と「海」に例えることができます。
   
海に相当するのが無意識、
大海に浮かぶ島に相当するのが意識。
   
大潮になると島は沈んで、引き潮になると顔を出す…、
そんな映像を思い浮かべてみましょう。
    
島は、実際、海にぷかぷか浮いているわけではなく、
大海の底の底、地球という大地と、地続きにある。
   
つまり「意識できる自分」は氷山の一角で、一方、
無意識は?といえば、地球規模の未知なる領域なのです。
    
意識と無意識は、常に補いあい、
こころの全体性を目指す補完的な関係です。
  
   
残念ながら、私たちの無意識は、
直接、見ることも触れることもできません。
   
しかし、こころの補完的働きとして
無意識は、外の世界(ひとやモノ)に映し出されます。
    
「他人は自分の写し鏡」
「世界におこることは、自分のこころの状況が反映される」
   
みなさんも生活の中で、実感することですよね。
  
これは、心理学の大家、フロイトやユング等による
科学的根拠に基づいた考え方です。
   
   
さてユングは、無意識にある元型のひとつとして、
    
「内なる異性(アニマ/アニムス)」を明らかにしました。
   
アニマとは、
男性のこころの中(無意識)にある、女性的特質や女性像。
   
アニムスとは、
女性のこころの中にある、男性的特質や男性像のこと。
   
   
つまり、生物学的/社会学的枠組で規定された
「性」にとどまらず、
    
私たちは心の深層(無意識)に
異なる性を併せ持っているのです。
  
私たちは、ある状況では、女性的特質を発揮し、
別なある時には、男性的特質を発揮している存在。
  
みなさんも、あとから振り返ってみると
内なる異性の特質を使っている体験が、きっとあるはずです。
   
ところが社会人生活を営む中で、
「こうであらねば」が強くなり、
ペルソナに従う人生が続くと、その状態は、
こころの側から眺めると、ある意味、一面的です。
   
そのため、意識と無意識は、
バランスをとろうとし始めます。
   
   
ユングは、アニマを次のように例えました。
   
アニマは、
心の奥にある「いのちの源泉との架け橋」であり、
  
生き生きとした質、夢、ビジョン、衝動。
発想の柔軟性、表現行為をはじめとする創造性。
偶然のひらめきをはじめとする直観・直感。
    
そして、これらを私たちに、届けてくれるものであり、
生命を慈しんだり、関係を育む能力を呼び覚ますもの。
  
つまり、愛やエロス、
生命の源泉に根ざした機能や質のことです!
     
      
私たちの日常生活に置き換えていると、
   
手料理を楽しんだり、
   
圧倒されるような大自然の風景に涙したり、
    
生い茂る緑の中、ひらひらと舞う蝶々に
目を奪われたり、
   
幼い頃、耳にした懐かしいメロディーを
ふと演奏したくなったり、
   
芸術に親しんだり、    
ささやかな表現活動を行ったり、
   
あるいは、人と人を繋ぎながら
実際、世話をしたり、
話にじっくり耳を傾けたり。
  
加えて、感傷に浸ってみたり、
憂鬱な気分などをあえて大事にしてみたり。
    
    
これらに関わることが、
アニマ(女性性)の質を生きることです。
   
        
そして、何にもまして強烈なアニマ体験は――恋愛です!
   
      
あなたの無意識に内在するアニマは、
実際の異性に投影されるのです!
        
         
「はじめて会ったような気がしない、
なぜか懐かしい感じがする」、
「運命を感じる出会いだ」、
「その人から笑顔でにっこりされると、
なんでも乗り越えられるような気がする」のは、
       
もともとあなたの中にあって漠然と感じていた
女性的な特質に、相手を介して触れたからなのです。
       
      
ここで重要なことは、
    
「恋愛」は、異性と単に恋に落ちる体験にとどまらない、
ということです。
   
相手を介して「内なる異性」に出会い、
無意識の潜在的な質を
花開かせる可能性を持つこと。
   
さらには恋愛を通して、
現実の異性と共に成長しあう関係が育めると、
  
あなた自身が、内なる異性の特質とつながり、
こころの全体性を生きる、
つまりは自己実現の機会となりうるのです!
   
       
なんで、あんなにエネルギーが出たのだろう、
なんで、あんなことが起きたのだろう…、
   
恋愛が、冷静なひとを根底から揺さぶるのは、 
そして恋愛がドラマチックで、理屈が通用しないのは、

アニマが、コントロールできない無意識の産物だからです。
    
そして、それゆえ、
これまで創りあげてきた自分(ペルソナ)や、
社会の常識とはあい反し、許容できない状況が
生じてしまうこともあるわけです。
    
あまりの情熱で、恋愛関係自体、その激しさに
壊れてしまうことは、みなさんも体験済みですね。
  
   
そして、既婚者の場合は、さらに強烈です。
   
現実に適応しすぎた結果、生命の源から
切り離され、枯渇しかけた「こころ」が
全体性を取り戻すため、内なる異性につながろうと
外の異性に投影する…。
     
       
――それが、「不倫」の始まりです!
     
(念のため確認事項として申し上げますが、
今回の記事は、不倫肯定の記事ではありません。
そのことを、ここで強調させていただきますね)
   
   
ここで大事なことは、夫婦が、この出来事を
どう生かしていくかです。
   
一時期は、不倫したパートナーを
非難・否定したくもなりますね。
     
でも、起きた出来事を一面的に、
善か悪か、正しいか間違っているか、
ゼロか100かの発想で判断しないこと。
   
「夫婦のあいだに不倫が起きたこと」を
ふたりの共有体験として、しんどいけれど、
葛藤状態にとどまりながら対話を重ねること。
  
互いにとって納得のできる着地点を見つけること。
   
   
このような過程では、
どれほど社会で活躍している強いひとでも、
自分の弱さに遭遇する、いや、直面せざるを得ない。
     
このようなアニマを統合する試みは、
   
男性に、そして強さを身につけた女性に、
   
自分の中の「弱さを生きる」ことを強います。
   

つまり、一見ネガティブにも受け取られる「弱さ」は、
可能性に満ちた、アニマの質なのです。
    
その質と向き合い続ける、
つまり「弱さを感じ、弱さにとどまる」。
      
この内的経験を通じて、私たちは、
大事な相手と深い交流を育める、こころの成熟を
手にできるのです。
   
そして相手との葛藤を通じて、本当の「個性」が磨かれて、
自己実現へ、また一歩近づくのです。

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