こんにちは。臨床心理士として20年、
「幸せな結婚・夫婦・家族カウンセリング」の谷地森久美子です。
みなさんはタイトルにある「甘え」について、
ポジティブ/ネガティブ、
どちらのイメージを持つでしょうか。
この言葉は、
ひとによって受け取り方が様々ですね。
今回は、個人と関係性、両方の可能性を広げる
「甘え」について。
大事な人との「甘えあい」は、
私たちに「成熟」をもたらす
大事な要素なのです。
それでは、はじめていきましょう。
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若い時には、なんでも
自分ひとりでやれると意気込んでいても、
経験を重ねる過程で、あとから振り返ると、
未熟な万能感にすぎなかったと、
思うことがありますね。
「万能 足りて 一心に足らず」
(「あらゆる技術や技にたけても、心が足りないと
本当の力を発揮できない。技術以上に心の修養が大事)
という表現があるように、
現状からさらに自分が突き抜けるためにも、
パートナーとの関係性は重要です。
なぜなら、特定の相手と関係を育み合うことは、
日々、互いに切磋琢磨する地道な過程であるため、
私たちの心を耕し、成熟に導く大事な試みだからです!
家族であるはずのパートナーと、
意見が合わず、しっくりこない――、
これまでの過程で、ある程度の社会的地位を
獲得してきたけれど、でも、何かがたりない――、
仕事は好きだけれど、パートナーもほしい、
でもなぜか異性と縁がない――、
このような状況に該当する方は、以下に述べることが
次なる一歩へのヒントとなります。
それは、ずばり、
*個として「自立」することが人生の最終ゴールではないこと。
*人生の中で、甘えたい気持ちを満たしていくこと。
(それが自己肯定感に、つながること)
*「甘えあい」がパートナーとのあいだで可能になると、
「私たち」の成長・成熟へと発展していけること。
さてここからは、「甘え」と「自立」の関係性を
明らかにして、
それと同時に、人生の中で、大事な人に甘えることが
遠のいてしまった方は、
その原因について整理していきましょう。
1) 「甘え」は人生の土台。あなたは、
子どもの時、充分、甘えられた?:
大事な誰かに「甘えられる」こと、
「甘えを受けとめてもらえる」こと、
つまり「甘えがかなえられること」は
私たちが「一生を通じて成長・成熟」するために、
大事な要素です。
(この点は、国際的に高い評価を受けた、
精神科医、土居健郎氏の、“甘えに関する研究”をはじめ、
依存や愛着理論などの研究によって、
明らかにされていることです)
「子どもの頃は誰でも甘えるものだし、自分も甘えられたはず。」
一般的に、こういう理解がされがちですが、
実際はそうでもありません。
親に甘えを受けとめてもらえなかった、
自分の甘えたい気持ちが充分満たされなかった――。
生き辛さを感じている方の話を伺っていると、
「甘え」のテーマが見え隠れすることがあります。
幼少期に、甘えが、かなえられなくなることは、
親が病気がち、経済的困難、
親元から引き離されて育ったなど、
現実的に「大変だ」と共通理解される
状況が関係する場合が多いです。が、
その一方、見た目には、
恵まれていそうな家庭においても、
生じる場合があります。
それは…、
親が子に、日々を楽しむことよりも、
常に100点満点の、正確さや完全さを、
(「完璧主義」「結果主義」)
最難関の資格(医師や弁護士など)や、
偏差値の高い大学進学などを期待し、
それがあたかも世間の常識であるかのように望むこと――。
そして、息が詰まるような
「過度な期待・要求」を強いること――。
このような家庭に育った子どもは、
存在そのものを肯定されず、
充分な甘えを経験できず、
いつの間にか子ども時代がすぎていきます。
いわゆる頑張り屋の良い子ほど、
潜在的な甘え願望を補完するかのように
自力で踏ん張り、
満たされなさ、寂しさなどを心の奥にしまった形の
「自立」をしていくことになります。
2)自立しすぎると、人を遠ざける?!:
甘えが満たされず、それでも「負けない!」と、
頑張ってきた歴史がある方には、次のような特徴があります。
あなたは、どれか、当てはまるでしょうか。
*ある一定の年齢になると、
仕事は自分がやった分、返ってくるものがあるけれど、
「恋愛は面倒」と感じるようになる。
(最近は、大学生のうちから、すでに、こんなふうに
感じるひとが増えています)
*強くなった分、心の奥にある「甘えたい気持ち」が
相対的に、自分の弱さとして感じられたりする。
そのため、さらに強くなろうと、外側を頑強に固める。
*自分ではそんなつもりはないのだけれど、
放っておいても大丈夫な人に見える。
(女性は、どんなに強く見える人でも安心できる相手に
頼りたい、守ってもらいたいと思う気持ちがあるもの。
でも外からは、そう見えない方が、時折見受けられます。
それって、辛いし、切ないですね。)
*辛い状況は自覚できるけれど、本当は、ほかの人からの
サポートが必要であることに自分自身が気づけない。
(このような人は、自分が困っているところまでは
わかっているのですが、本当は、どうしてほしいのかを
自分自身、認識するのが苦手です。)
*助けを求めることに慣れていないため、
人に伝わるSOSの表現ができない。
(自分自身を素直に出すのに慣れないため、
本当は一刻を争う状況なのに、大したことがない態度を
とったり、隙がない印象を周りに与える。)
*助けてもらいたいニーズは出せても、
相手のサポートを、素直に受け取れない。
(このような人は、厳しい現実を生き抜くために
自分なりの工夫や方法を持っています。
それを手放せず、心を開くことができなかったり、
サポートしてもらっているにも関わらず、
「自分が望んでいるのは、そんなものじゃない」と、
“すねる・ぐずる”を出してしまい、相手を困惑させる。)
甘えのテーマが隠れている「自立」は、
人と親しくなるのを阻んでしまう性質があるのです。
さて、今の自分から一歩進化/深化するために
目指すべき方向は、「個人の自立」を越えて、
パートナーを介しての、自分の潜在的な可能性と
繋がることです。
そして、「私」から「私たち」へ、
時には力を合わせ、時には甘えもしっかり許し、
共に人生を歩んでいくことです!
これこそが、分析心理学の創始者、カール・ユングが
唱えた「個性化の道」であり、
自分全体を生きる道といえるでしょう。
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