こんにちは。臨床心理士として20年、
「幸せな結婚・夫婦・家族カウンセリング」の谷地森久美子です。
うまくいっているカップルとお会いすると、
ふたりに共通する、なんとも言えない
絶妙なバランスを感じることがあるものです。
それって、どういうことなのでしょうか。
今回はその答えにもつながる
「愛する人と幸せを実現する条件」について。
これは心理学の家族療法で検証されているお話です。
それでは、はじめていきましょう。
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愛を誓ったパートナーと幸せな結婚生活を送りたい――、
みなさんもそう思いますよね!
でも、結婚後、うまくいくカップルと、
そうでないカップルがいます。なぜでしょうか?
キーワードは――「心理的(精神的)自立」です。
世界的な功績を残した家族療法家、
ボーエンは次のように言っています。
≪夫婦は、この自立度が同じ程度の人を(無意識的に)
パートナーとして選択する傾向がある≫と――。
つまり、自分の心理的自立度が高くなれば、結果的に、
同じ自立度の相手を選ぶことになり、そして――、
幸せな結婚生活をおくることができる、ということです!
さて、心理的自立といっても、
「大人になれば、ある程度、誰でも
精神的にも自立しているでしょう?」とか、
「自立しているかどうかは、何でわかるの?」
といった疑問が出てきますね。
心理的自立を、家族療法において
先に紹介したボーエンは
「自己分化」と呼びました。
この「自己分化」の意味をとらえられると、
心理的自立とは、実際、どういうことなのかが
見えてきます。
さて、日常的な夫婦のやりとりの中で、
例えば、
「なんで、帰りがこんなに遅くなったの?」
という相手からの投げかけに対し、
「待たせてごめんね。悪かったね…」と、
情緒豊かな返答をする人もいれば、
「事前に伝えていたと思うけど?
言いたいことがあるのなら、明日にしてくれる?」
と、さらっと返す人もいる。
そして、その言動に、傷つく人もいれば、
「あぁ、そうだよね、わかった…」と
事実として受け入れることができる人までいます。
上のようなコミュニケーションの中で、
「よかった!」「そうなんだね~」といった
感情や感覚での反応が、感情システムの働きです。
一方、論理的思考を中心とする反応が
知性システムの働きです。
そして、この2つのシステムが個人の中で、
その時々の状況や状態にあわせて
機能している内的過程のことを
「自己分化」と呼びます。
例えば、生まれたばかりの赤ちゃんは、
感覚だけの存在。
おっぱいが欲しいのか、
抱っこしてもらいたいのか、
言葉を知らない・使えないため、
自分が何を感じているか、何を怖れているのか、
自分で自分のことがキャッチできない。
そのため、ひたすら泣く――、
お母さんが抱き上げても、むずかり続ける――。
この状態は、まさしく感覚のかたまり。
論理思考は存在しません。
そして、その後、赤ちゃんも成長を通して、
「言葉」を覚え使え、そして「考える」といった、
知性が生まれはじめると、
その能力の集合体から知性のシステムが生まれます。
この2つのシステムが、私たちの中で、
どのように機能しているか――、
それらがスムースに洗練された形で機能している時、
「自己分化度が高い」と表現します。
カップルの「幸せの実現」には、
この自己分化度が大きく影響するのです!
ここから、夫婦・カップル間でありがちな、
日常のいざこざを例にして、自己分化度について
さらに深めていきましょう。
A美さんとB也さんというカップルがいます。
A美さんは、とても感情豊か。その分、パートナーにも、
情緒豊かに共感してくれることを期待します。
と同時に、
パートナーが必ずしも自分と同じように感じ取れない
という客観的事実を理解したり、
冷静に物事を振り返ったりすることが苦手。
(感情システム優位の人の特徴です)
B也さんのほうは、感情よりも、
理論を組み立てて考えるのが得意。
筋道を立てて話せるけれど、
頭で考えることが優先される分、
今、自分が、どんな気持ちかを感じ、
それを表現したり、
あるいは、パートナーの気持ちをくみとって、
共感を示したりするのが苦手。
(知性システム優位の人の特徴です)
もちろん、カップルによっては、
逆の組み合わせもあるでしょう。
必ずしも、女性が感情的で、
男性が論理的であるとは限りません。
この二人が夫婦として何らかの問題に直面すると、
どうなるでしょうか。
① A美さんは、気持ちをわかってほしくて感情をぶつける➡
② B也さんは、理屈で、感情を避ける➡
③ A美さんは、B也さんの言動に気持ちが逆なでされ、
さらに感情的に迫る➡
④ B也さんはA美さんの言動を受けて
さらに理屈で返す➡(これがぐるぐる続く)
という、いつ終わるのかわからない
どろ沼の口論にハマっていきます。
つまり感情システム優位の人ほど、気持ちの分かち合いや、
体温を感じられるコミュニケーションを求め、
一方で、知性システム優位な人ほど、
パートナーに、論理や理屈に基づいた対話を求めます。
そして、どろ沼になるほど、普段、冷静な人でも、
自分の考えや感じ方こそ正しく、相手は間違っている、
だから、互いに「相手こそ変化すべき」と
自分のことは棚にあげ、
問題は暗礁に乗り上げたままとなります。
(そして最悪、破局となります!)
さて、最初にあげた問いですが、
心理的・精神的に自立している、とは、
個人の中で、感情システム(感情や感覚)と
知性システム(思考や論理)が
「状況に応じて柔軟」に機能できる状態にあること
(その機能性が高いこと)、
ということになります!
この「心理的(精神的)自立度の高い/低い」、
あるいは「自己分化度の高い/低い」は、
「仕事ができる/できない」とは、
必ずしも一致しません。
仕事ができる人でも、
夫婦・家族・親(実家)のことになると、
途端、機能しなくなる現実を、私はたくさん知っています。
次回は、「幸せな結婚生活実現のための、
心理的自立度の高め方」について、
具体例をもとに考えていきます。
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