つながりは「甘える」ことから始まる~甘えはメイク・ラブのエッセンス~

こんにちは。臨床心理士として20年、
「幸せな結婚・夫婦・家族カウンセリング」の谷地森久美子です。

「デートって、どうやるか忘れてしまって戸惑っています」――

お客さまの中で、最近、婚活を始めた方が、
こんなことをおっしゃっていました。

確かに、そうなんですよね。

異性とのデートって、しばらくしていないと、
本当にどうしていいか、わからなくなったりするものですね。

このエピソードにも関係しますが、
今回は、大人にとっての「甘え」について。

「甘え」は、人と人を結ぶ大事なエッセンスです。
それでは、はじめていきましょう。          

**********************************

              
自分を「ほめる」「いたわる」「ねぎらう」は、
人生の質を高め、自尊心にも大きく影響するもの。
         
ところが、   
         
「自分に対して、そんなことするの、無理~!」
と反応する方、カウンセリングの中では
珍しくありません。
            
この記事をお読みのみなさんは、いかがでしょうか。
         
        
無理である理由を伺うと、
              
「ほめる」などの、自分を愛することは、
甘え(甘やかすこと)であり罪になるから、
        
というお答えをされた方がおられます。
        
        
「甘え」は、悪いことなのでしょうか。
         
      
今回、この「甘え」について、みなさんと共に
考えていきたいと思います。
      
        
ひとが成長・成熟していくために、実は、
「甘え」は欠かせない要素です。
        
      
生まれたての赤ちゃんや幼い子どもにとって、
       
主に、身近な親から
         
「大好きだよ」といった、愛のメッセージを
受け続け、肯定されること、
        
「そのままでいいよ」と、存在自体を
受け入れられることは、
       
自己肯定感や自尊心を育むために、
とても重要です。
       
その際、子ども側からみて、
「そのままでいいよ」と肯定される、
実際の体験のひとつが、
        
親に、自分の「甘え」を受け取ってもらうこと、
「甘え」が満たされることなのです。
        
ここで重要なのは、
「甘えを確かに受け取る存在」。
     
      
子ども時代に、その関係性や環境が
充分でなかった場合、
     
ひとは、愛に飢えた状態となり、
満たされることを常に
求め続けることになるのです!
         
あるいは、自分を律して
甘えを禁じてしまう在り方・生き方に
なってしまうのです!
          
本人が変えようと意図しない限り、
一生を通じて、です。
         
(共依存・アルコール依存をはじめとする、
様々な中毒・嗜癖の問題の背景に、
この「甘え」のテーマが潜んでいます。)
      
        
甘えは、もともとは
親と子どもの関係から始まるものですが、
         
成長して、大人になってからも、心理的距離の近い、
長年つきあいがある人間関係において、
        
必ずといっていいほど、見え隠れする
テーマのひとつです。
          
みなさんも、心あたりがありませんか。
             
        
どんなカップルも、ハネムーン時期は、
感覚的に、甘えあえても、
         
平凡な生活の中で些細ないざこざが、
積もり積もっていくと、
         
ふたりのあいだの親密さが
次第に枯れ果てて、
          
甘えを通わせる関係性では
なくなってしまうことがある――。
          
わざと、刺々しい言葉を使い、振る舞いをして
相手を遠ざけてしまう――。
     
そうすると当然ですが、傷つきますね。
      
しかし私たちは、年齢を重ねるほど、
傷つきを巧妙に隠す知恵を身につけ、
それを心の奥におさめ、
何事もなかったかのようにしてしまいがちです。
                 
しかし実際それは、心の奥におさまらず、
「すねる」「ひがむ」「ひねくれる」「うらむ」などの
感情や態度に変わっていくのです。
          
      
さて、ここで「甘え」の研究において、
世界的な評価を受けた精神科医、
土居健郎氏の文章を紹介しますね。
            
おそらく多くの方が腑に落ちる、
甘えの表現の本質を、見事に見抜いた
興味深い内容です。
      
      
☆      ☆      ☆
    
「すねる」「ひがむ」「ひねくれる」は
いずれも甘えられない心理に関係している。
     
       
「すねる」は素直に甘えられないから、
そうなるのであるが、しかし、
「すね」ながら、甘えているといえる。
      
       
「ふてくされる」というのは、
「すね」の結果、起きる現象である。
        
         
「ひがむ」は、自分が不当な取り扱いを
受けていると曲解することであるが、
それは自分の甘えの当てがはずれたことに
起因している。
      
       
「ひねくれる」のは、甘えることをしないで
かえって、相手に背を向けることであるが、
それは密かに相手に対し含むところがあるからである。
従って甘えてないように見えて根本的な心の態度は
やはり「甘え」であるといえる。
       
        
「うらむ」のは、「甘え」が拒絶されたということで、
相手に敵意を向けることであるが、
この敵意は「憎む」という場合よりも、もっと
纏綿(てんめん:情緒が深くこまやかで離れにくい様)と
したところがあり、それだけ密接に「甘え」の心理に
密着している。
        
☆      ☆      ☆
       
いかがでしたでしょうか。
       
若干、かたい文章ではありますが、
カップル・夫婦の葛藤場面も想像できるような、
シンプルな説明で、
       
個人的には、「こういうこと、あるある…」と痛感。
         
         
甘えの感情を、私たちは、
        
「私は甘えます。(だから、受け取ってください)」
とは、表現しませんよね。
          
甘えは、言葉の背後・言外に、
それとなく、表現されるもの。
        
表現している側が、自分が甘えていることに
気がつかないことも往々にしてある…。
      
       
でも同時に、どこかに受け取ってほしいという
矛盾した気持ちがある中で、
       
期待した通りに相手が受け取ってくれないと、
            
「夫婦なのに、なぜ、わかってくれないのか」
「察してくれて、当然だろ?!」と思いつつ、
      
勝手に傷ついて、
そして「すねる」「ふてくされる」――。
      
(言葉にして表現していないのだから、
相手が、キャッチできないのは当然なのに…)
      
     
甘えは、母と乳児の関係が起源のため、
      
肌と肌のふれあいの状況に、
心がどこか(良い意味で)退行して、
醸し出されてくるのも特徴です。
        
つまり大人でいえば、「ベッドの中」!
      
         
この状況は、例えば仕事をしている時の
日常(昼間)の意識状態とは、
かなり違ってきますね。
        
通常、身につけている肩書は通用せず、
無防備な状況でもあるため、
            
強さ・揺るがなさなどを全面に出して
活動しているひとほど、
          
ベッドの中で、相手にどう、ゆだねていけばよいか…、
そして、どう甘えていいのか、わからなくなる…。
       
     
相手に甘えたくて、甘えられなくて、
でも甘えたくて…。
このエンドレスな葛藤状態、もどかしいですよね。
      
        
長くつれそった関係でも、
程よい甘え方が見えなくなってしまう状況も
あるかもしれませんね。
      
     
   
ここで、親密な関係における「甘え」について、
ポイントをまとめておきましょう。
     
      
子どもはともかく、社会生活を営む大人の世界では、
「甘え」は、肯定されないイメージがあります。
      
しかし、「甘え」は、悪い意味ばかりでなく、
人と人をつなぐ感情であり、
     
「甘えあう」ことは、
大事な「価値」のひとつです――。
    
そして、親密な関係ではなおのこと、
      
その甘えを活用すること――。
     
      
パートナーが、「つんっ!」としていたり、
すねていたりしたら、
「甘えているのかな」と想ってみる。
        
この時、相手のスネに巻き込まれて、
こちらまで、イライラして、すねないこと。
       
そして、お互い、甘えを言葉にしてみる。
    
「甘えていい?」とか、
「甘えてるんだけど、これ、お願いね」とか、
相手に投げかけてみる。
     
あえて、子どものように甘えてみるのもひとつ。
     
甘えは、親密さや官能に重なる、ふたりをつなぐ
エッセンスです。
    
     
よく、男性は、パートナーとの
メイク・ラブがうまくいっていると、
「男として自信がつく」と表現しますよね。
        
多くの場合、相手を制覇・陥落(?)させた
満足や自信のことのようですが、
       
「甘え」の視点から眺めると、
もうひとつ、大事な意味があると思うのです。
     
それは、甘えあえる相手の存在、
そして、そういう確かな関係性が
よりどころとなっている――、
     
つまりは、一方的な満足ではなく、
   
互いに現在進行形で、愛し合っている関係性が
「確かに在る」と実感できるからこそ、
     
生命力が沸いてくる――。
    
そういうことではないかと思うのです。

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