こんにちは。臨床心理士として20年、
「幸せな結婚・夫婦・家族カウンセリング」の谷地森久美子です。
ここ最近、大人でもアニメ作品を見に
劇場に足を運ぶ方が増えていますね。
アニメに代表される二次元の世界には実写とは異なる、
私たちのこころを掴んで離さない特別な要素があるようです。
アニメファンの中で、時折、
「アニメに触れていれば、それで充分。
実際の恋人よりも、アニメやゲームのヒロイン・ヒーローのほうが
ピュアで美しい」とおっしゃる方がおられます。
今回は、そのようなファンから見た二次元のキャラクターの魅力と、
実際の恋愛の意義について、
ユング心理学の視点から考えていきます。
それでは、はじめていきましょう。
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アニメやゲームに登場するキャラクターには、不思議な魅力があります。
御馴染みの女優さんや俳優さんでもないのに、
なぜ私たちのこころをひきつけるのでしょう。
それは
「時代が求めているヒーロー・ヒロイン像だから」
「ありえなく美しく、純粋」「歳をとらないし、可能性に満ち溢れている」
「PCやゲーム機をONにすれば、会いたい時にいつでも会える」
「(ゲームによっては)気に入らなければ自分好みにアレンジできるし、
リセットしてやり直せる」
「自分の望みを基本的に受け入れ裏切らない」など、
アニメファンなら、こんなふうに答えるかもしれません
心理学における「投影」の考え方は、
そのことにひとつのヒントを与えてくれます。
いわゆる俳優・女優さんたちは、生きた人間です。
それゆえ、どんなに役作りをしても、ひととしての
「自我と生身のからだ」を持っています。
一方、アニメ・ゲームの登場人物には、自我も生きたからだもありません。
それがない分、現実とアニメ・ゲームに代表される
ファンタジーの世界との境界が薄くなり、
私たちは、目覚めている状態で、夜見る夢の世界(無意識の世界)に
入っていくことができるのです。
そしてアニメ・ゲームの世界は、無意識にある神話的テーマや、
ヒーロー・ヒロインに凝縮される
「こころの奥に眠る理想像」のイメージを、
実写以上に、届けてくれる働きをもっているのです。
アニメが単に、絵が動いているだけのものなのに、
感情移入してしまうのは、そういう理由が隠されています。
(ユングの生きていた時代には、アニメは普及していませんでしたが、
夢分析や物語分析から、これらの考え方を、明らかにしていました)
ところで、私たちの多くは、誰かと深いつながりを持ち、
生きる歓びを共有したいというニーズを持っています。
しかし現実は、とても厳しい――!
相手に対し、どのようにこころを尽くしても
思いが届かない場合もあるし、
一瞬、繋がった感触があっても、それが長続きするかもわからない。
そして好きな相手に、逆に裏切られることもある。
だからこそ、人間関係でひどく傷ついてしまい
恋愛に良い思い出がない方は、
SFファンタジーなど夢や神話の世界に入っていける
アニメ・ゲームに深く魅了されるわけです。
アニメは、安全な状態で誰かとつながりを得られるような
世界を提供してくれます。
そして、どんなに理想が高くても、思い通りに、
あこがれの相手と付きあうことが可能です。
そういう意味で現実世界より、
アニメ・ゲームの世界は、優しいのです。
これはアニメが、広く愛される理由のひとつと言っても
いいかもしれません。でも、ここからが本題です!
二次元の登場人物が、私たちにむかって微笑みかける…。
でもそれは、自分がつくりだした理想の世界を、
自分がうっとり見ているにすぎません。
現実に立ち戻らず、その世界にとどまってしまうと、その先、
あなたの成長も、幸せな人生も築くことはできないのです。
私は、アニメやゲームが表現している世界を
否定しているのではありません。
むしろ、その世界に守られながら理想の状態を
一瞬でも味わえて、
そして勇気をもらえたならば――、
この記事を読んでくださっている皆さんには、
二次元で満足せず、
ぜひ、あなたの、生きているこころとからだ、
いのちを燃やしながら、
実際に現実生活で、
相手と関わる一歩を踏み出してほしいのです!
決して、楽なことではありませんが、
現実の誰かと実際関わってみる。
生身の人間同士、こころやからだのぬくもり、
その存在に、直に触れ感じてみる。
現実の関係の中で試みてこそ、
愛は、生身のあなたのこころとからだの中に、
根づいていくのです!
これが恋愛の意義、醍醐味のひとつ目です。
そして恋愛の意義、二つ目。
実際の相手と関わり続け、時にはすれ違い、
それでも関わり合って、ぶつかり合ったことも
思い出にしながら理解を深めていくーー。
そういった過程の中で、相手に感じていた魅力、
あこがれ、理想などは、
実は自分の一側面と気づいていく――。
あるいは互いに影響しあう中で、
相手のものだと思っていた特質や能力が、
自分にも在り、その要素を活かして生きていく――。
その繰り返し、積み重ねが、
あなたを大きく成長させてくれるのです!
アニメ・ゲームの二次元の世界では、
あなたの理想に触れることはできても、
成長や人格の深まりは、起きません。
むしろ、自己中心的な世界にとどまることになり、
あなたは、ネバーランドの住人ピーターパンのように、
永遠の少年/少女のままです。
そして生身の身体のほうは歳をとり続け、
人生のある時点で限界(絶望)にぶつかってしまいます。
最後に、もうひとつ、現実の関わりあいの真価、
素晴らしさについて、お話したいと思います。
それは、蜜月の時期の恋愛体験以上に、
「ふたりのあいだに危機が起きた時」。
危機を乗り越えるため、そこに投入する労力は
計り知れないものがあります。
大きな傷つきも体験するでしょう。
でも、その状況に対して、あなたが
できる限りのことをやり切ることができたなら、
その過程で得られるものは、
最初のハネムーン期の幸せ感、
あるいは恋愛をしたことがなかった時の想像を、
はるかに越えた、
「豊かさ」を持っているはずです。
「人生の宝物・至宝(Great treasure)」
これは、アニメやゲーム、物語の世界に良く登場する言葉ですが、
現実の相手との関係の中で、
手を抜かず果敢に挑んだ方が手にする
価値ある経験の中にこそ、至宝は含まれているのです!
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